人生には、まるで時間が止まってしまったように感じる時期があります。
振り返れば、私自身もそのような時間を何度も経験してきました。
若い頃には、心の不調によって社会から離れた時期がありました。
結婚や離婚を経験し、大切だと思っていたものを手放さなければならない時もありました。
人生をかけて築いてきた人間関係が終わったこともあります。
信頼していた相手との別れや、思い描いていた未来が突然変わってしまったこともありました。
その度に私は、
「なぜこんなことが起きるのだろう」
「私は何を間違えたのだろう」
「ここまで積み上げてきたものは無駄だったのだろうか」
と、自分自身に問い続けました。
当時は苦しさしか見えませんでした。
しかし今になって振り返ると、人生を大きく変えた転機は、いつもそのような空白期間の中から始まっていました。
人生は前に進む時だけが成長ではない
現代社会では、常に前進することが求められます。
成果を出すこと。
結果を残すこと。
挑戦し続けること。
止まらないこと。
けれども自然界を見渡せば、生命はそのように一直線には成長していません。
木々は芽吹き、成長し、葉を落とし、そして再び芽吹きます。
種もまた、長い時間を土の中で過ごします。
外から見れば何も起きていないように見えるでしょう。
しかしその沈黙の中で、新しい命は静かに準備を進めています。
私たちの人生も同じなのかもしれません。
何も進んでいないように見える時。
未来が見えない時。
立ち止まるしかない時。
その時間は、魂が次の人生の準備をしている期間なのかもしれないのです。
ヨガ哲学と出会って理解できたこと
私がヨガ哲学を学び始めた頃、最も救われた教えの一つがあります。
それは、
「人生に起こる出来事には意味がある」
という考え方でした。
もちろん、その意味は出来事の最中には分かりません。
苦しみの真っ只中にいる時、人は哲学を語る余裕などありません。
けれども年月を経て振り返ると、
「あの経験があったから今の私がいる」
と思える瞬間があります。
もし、うつ病を経験していなければ。
もし、DVや離婚を経験していなければ。
もし、癌にならなければ。
もし、人生が思い通りに進み続けていたなら。
私はヨガと出会うこともなかったかもしれません。
今の活動も存在しなかったでしょう。
そう考えると、当時は不幸だと思っていた出来事が、実は人生の方向を変える大切な転機だったことに気づきます。
アルジュナもまた立ち止まった
古代インドの聖典『バガヴァッド・ギーター』には、アルジュナという戦士が登場します。
彼は人生最大の戦いを前にして突然立ち尽くします。
身体は震え、
口は乾き、
戦う意味すら分からなくなってしまいます。
私は初めてこの場面を読んだ時、とても人間らしい物語だと感じました。
なぜなら、私たちもまた人生の中で同じような経験をするからです。
進むべき道が分からなくなる。
今まで信じてきたものが揺らぐ。
何のために生きているのか見失う。
その時、アルジュナの導き手であるクリシュナが伝えたのは、
「もっと頑張りなさい」
という言葉ではありませんでした。
「あなたは役割や肩書きだけの存在ではない」
という智慧でした。
私たちは何者なのか
ヨガ哲学では、私たちの本質をアートマンと呼びます。
それは職業でもありません。
肩書きでもありません。
年齢でもありません。
人生の中で変化し続けるあらゆるものの奥に存在する、本来の自己です。
人生の転機は、そのことを思い出させるために訪れることがあります。
仕事を失った時。
家庭環境が変わった時。
健康を失った時。
私たちは苦しみます。
しかしその一方で、
「それでも変わらず存在している私」
にも出会うことになります。
ヨガ哲学は、その存在こそが本当の自己だと語ります。
失うことによって始まる人生
タントラ哲学にはカーリー女神という象徴があります。
カーリーは破壊の象徴として知られていますが、本当は生命を壊す存在ではありません。
執着。
恐れ。
古い価値観。
過去の自分。
それらを手放し、本来の自分へ還るための力を表しています。
人生には、自分の意志では終わらせられない出来事があります。
しかし振り返れば、その終わりが新しい人生の始まりだったということも少なくありません。
私自身、人生の中で何度もそれを経験してきました。
だから今は、苦しみの最中にいる人に伝えたいのです。
今は意味が分からなくても大丈夫です。
答えが見つからなくても大丈夫です。
人生には、すぐに理解できない時間があります。
空白期間は魂の冬である
冬の森は静かです。
花も咲いていません。
木々は葉を落としています。
けれども生命は消えていません。
春に向けて力を蓄えています。
人生の空白期間も同じです。
何も進んでいないように見える時。
未来が見えない時。
人生が止まったように感じる時。
その沈黙の中で、魂は静かに成熟しています。
そして振り返った時、多くの人が気づきます。
人生を変えたのは順調だった時期ではなく、あの苦しかった時間だったのだと。
ヨガとは、人生から困難を取り除くための技術ではありません。
変化し続ける人生の中で、変わることのない本質の自己を発見していく智慧です。
もし今、人生の空白期間の中にいるならば、どうか焦らないでください。
種が土の中で芽吹く準備をするように、あなたの魂もまた、次の人生の準備をしているのかもしれません。
RISHIKESH YOGASHALA
Yoga Wisdom
サティヤプレーマ
