ヨガ哲学と女性の成熟④ 「手放す」ことは、失うことではない ― アパリグラハ(不執着)が教える、人生を軽やかに生きる智慧 ―


人生の前半は、「増やす」時間なのかもしれません。

 

知識を増やす。

経験を積む。

仕事を覚える。

家庭を築く。

子どもを育てる。

友人とのつながりを広げる。

 

そうして私たちは、多くのものを抱えながら人生を歩いていきます。

それは、とても尊いことです。

一つひとつの経験が、人としての深みを育ててくれます。

 

けれど、人生には、もう一つの季節があります。

 

それは、「手放していく季節」です。

 

子どもが独立する。

仕事を引退する。

親を見送る。

体力が少しずつ変化する。

 

若い頃と同じようにはできないことも増えていきます。

そうした変化に戸惑うのは、ごく自然なことです。

 

けれどヨガ哲学は、その変化を失うこととしてではなく、新しい自由への入り口として見つめます。

 

『ヨーガ・スートラ』には、アパリグラハ(不執着)という教えがあります。

 

「必要以上に執着しないこと」と訳されますが、それは「何も持たないこと」ではありません。

 

本当に大切なのは、「持つこと」ではなく、「持っているものに縛られないこと」です。

 

肩書きに縛られない。

過去の成功に縛られない。

若さに執着しない。

 

「こうでなければならない」という思い込みを少しずつ手放していく。

 

そのたびに、心は軽やかになっていきます。

 

女性の人生には、多くの役割があります。

その役割を大切に生きてきたからこそ、人生の後半には、その役割の一部を手放す時が訪れます。

その時、「もう終わりだ」と感じる人もいれば、「これからが本当の私の人生かもしれない」と感じる人もいます。

 

違いは、起きた出来事ではありません。

変化との向き合い方です。

 

私は、年齢を重ねることとは、失うことではなく、余分なものを少しずつ手放し、本当に大切なものだけが残っていく過程なのではないかと感じています。

 

若い頃には、周囲の評価が気になっていた人も、

人生の後半では、「自分が納得できる生き方」を大切にするようになります。

 

それは諦めではありません。

成熟です。

 

アパリグラハとは、「捨てる技術」ではありません。

人生を軽くし、本来の自分へ還っていく智慧です。

 

だから、人生の後半は、何かを失う季節ではありません。

 

本当に必要なものだけを抱えて、より自由に歩き始める、新しい旅の始まりなのかもしれません。

 

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