ヨガ哲学と女性の成熟⑥ 人生の後半に必要なのは、「頑張ること」ではなく「手放すこと」 ― ヨガ哲学が教える、不執着という成熟の智慧 ―


若い頃の私たちは、「もっと」という言葉に支えられながら生きています。

 

もっと頑張ろう。

もっと認められたい。

もっと成長したい。

もっと良い母親になりたい。

もっと仕事ができるようになりたい。

 

その向上心は、人生を豊かにしてくれる大切な力です。

だからヨガ哲学も、努力そのものを否定することはありません。

 

けれど人生には、努力の方向を変える時期があります。

 

人生の前半は、外へ向かって積み重ねる時間。

人生の後半は、内側へ向かって整えていく時間。

 

その転換点に立ったとき、今までと同じように頑張り続けようとすると、心も身体も少しずつ悲鳴を上げ始めます。

 

ヨガ哲学には、「アパリグラハ」という教えがあります。

一般には「不執着」と訳されますが、それは「何も持たないこと」ではありません。

 

本当に大切なのは、「持っていること」ではなく、「持っているものに縛られないこと」です。

 

過去の成功。

周囲からの評価。

若い頃の自分。

「こうあるべき」という理想。

 

それらを握りしめたままだと、新しい人生を受け入れる余白がなくなってしまいます。

 

そして、もう一つ大切な教えがあります。

 

それが「ヴァイラーギャ」です。

これは「離欲」や「執着から自由になること」と訳されます。

 

誤解されやすい言葉ですが、「欲をなくすこと」ではありません。

 

何かを得られなくても、自分の価値は変わらない。

失うことを恐れなくても、生きる意味は失われない。

そんな心の自由を育てていくことです。

人生の後半には、多くの別れがあります。

子どもの独立。

親との別れ。

仕事や役職からの卒業。

体力や外見の変化。

 

誰もが避けて通ることのできない変化です。

 

だからこそ、「失わない人生」を目指すより、「変化を受け入れられる心」を育てることの方が、ずっと大切なのではないでしょうか。

 

私は、多くの女性とお話をする中で感じることがあります。

人生後半を穏やかに生きている方ほど、「もう若くないから」と諦めているのではありません。

 

むしろ、「若い頃の自分に戻ろう」と無理をしていないのです。

今の自分を受け入れ、その時々にできることを丁寧に重ねている。

 

その姿は、とても自然で、美しく見えます。

 

ヨガ哲学が教える「手放す」とは、人生を縮小することではありません。

本当に必要なものだけを残し、心を軽くしていくことです。

 

すると、不思議なことに、失ったと思っていた場所には、新しい時間や、新しい出会い、そして新しい自分が静かに育ち始めます。

人生の成熟とは、多くを抱え続けることではありません。

 

必要なものを見極め、必要のなくなったものに感謝しながら手放していくこと。

 

その繰り返しの中で、人は少しずつ自由になっていくのだと、ヨガ哲学は教えてくれます。

 

 

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