ヨガの効果 The Benefit of Yoga


自分自身の心と体の状態を知ることで、自然と何をするべきかが分かってきます。

心身の健康を保つためには、自分自身を知り、健康にする智慧と技術を身につけなくてはなりません。

現代では、運動量が減り、必要以上の食を摂り、病気になるまで自分の健康に無頓着な人が多いのではないでしょうか。調子が悪ければ、すぐ薬を飲んで、その場をしのぎ、病気になり不自由になってから健康のありがたみに気がつきます。

これが多くの現代人の生活スタイルではないでしょうか。
ヨガは、心と体の要らないものを取り除いていきます。人間に本来備わっている自然治癒力を高め、病気にならない体を作る=未病の状態に導いてくれます。
ヨガを単なるストレッチやスポーツの一種と捉えている方は多いと思いますが、ヨガがこれらと根本的に違うのは、生命の源である、呼吸を使って、呼吸、心、体の三位一体で行なっていく点です。

どうして、ヨガをすると健康になるのかといえば、自分の体の状態、心の状態を常に見つめながら、無理なく、自分のペースで、心地よい呼吸とともに行なっていくからです。

痛みを我慢したり、人と比べて無理に行なったり、柔軟性などの身体能力を競いあったりするのは、ヨガとはいえません。人がいつまでも若々しく健康的でいるためには、自分をよく知り本来備わっている自然治癒力という潜在能力を高めていく必要があります。


柔軟性の向上

柔軟性が高いと、なぜ健康にいいのでしょうか。

たくさんある理由の中からわかりやすい例をあげてみます。

太ももの裏の筋肉が硬いと腰椎が平坦になり腰痛を起こしたりします。

柔軟性が向上すると怪我や故障を予防します。

また、血流が促進され、疲労物質も排出されやすくなり、疲れにくい体質へと変わります。

 

筋肉の強化

充分な筋肉がないと、関節炎や腰痛などが起こりやすくなり、高齢者の場合、転倒の原因にもなります。

老化現象といわれる身体的な衰えは、筋肉が落ちることによって起こります。

ヨガのポーズは筋肉を強化するだけでなく、筋力と柔軟性のバランスを改善します。

また、筋トレばかりを偏ってすると、バランスよく強化されないばかりか、柔軟性が失われてしまいます。

特に、腰痛予防として腹筋運動をする人が多いですが、腹筋だけが強化されると恥骨が強く引き上げられ腰が平らになってしまい、かえって腰痛を悪化させることもあるので、注意が必要です。

 

バランス力の向上

バランス感覚を身につけることで、つまずいたり転倒したりすることを防止できます。

ヨガでは体を前後左右バランスよく動かすので、ケガの原因となる筋肉のアンバランスも改善していきます。

また、心と体は密接につながりあっていますので、バランス力が向上すると、情緒的な安定ももたらします。

 

免疫力の向上

免疫機能を改善・向上する効果がもっとも高いと科学的に評価されているのは〈瞑想〉です。

ヨガのポーズはもともと、瞑想を行なうために作られました。

瞑想を行うと、免疫機能が高まり、自己免疫疾患を起こす、攻撃的な免疫機能が低下します。

  

自己受容感覚の向上(目を閉じていても体の位置を知ることができる能力)

姿勢が悪い、動きがぎこちない人の多くは、自分の動きの何が悪いのか自覚がないため治すことができません。

また自覚があったとしても、やはり自分の動きの何が悪いのかがわからず、直すことができないでいます。

ヨガのポーズの実践を習慣づけることで、自分の体のどの部分がどのように動いているのか意識できるようになります。

自分の内面の変化を敏感に察知できるようになることで、治療効果の高い初期の段階で、深刻な病気のわずかな兆候に気づくことができたりします。 

 

骨を丈夫にする

ヨガのポーズは自分の体重を支えるものが多く、骨を丈夫にし、骨粗しょう症を防ぐのに効果的です。

また、ヨガはストレスホルモンであるコルチゾールの値を下げるので、骨中のカルシウム濃度が高水準に保たれることが証明されています。

コルチゾール過多になると、骨の形成が妨げられ骨折しやすくなってしまいます。

 

有酸素運動

ヨガでは心拍数を上げすぎずに、呼吸によって充分に酸素を体内に取り入れながら運動することができます。

有酸素運動は、心臓病からうつ病まで様々な病気の予防と治療に効果があります。

ヨガのポーズと呼吸法の実践で、心肺機能が高まります。

つまり、持久力が向上し、運動後の疲労回復機能も高まります。

心臓病患者が日常生活にヨガを取り入れることで、心臓のポンプ機能が向上したという研究結果もあります。

 

ダイエット効果

ヨガを習慣にすることで減量が促進されることが多くの研究によって証明されています。減量だけでなく、細くしなやかな筋肉が発達し、身体が内側から引き締まります。ヨガでは肥満を引き起こした精神的な要因にも対処が可能なので、他の方法で減量に失敗続きの人でもヨガでの減量に成功するのはこのためだと考えられています。また、ヨガの哲学的な面を学ぶことで、食事も気遣うようになるので、減量効果が高くなります。

 

神経系の緊張緩和

自律神経系は交感神経と副交感神経の二つの神経系があります。この二つの神経系のバランスを調整することでストレスが緩和されます。緊急時には交感神経

(闘争、逃走反応)が働きますが、それ以外では副交感神経が働きます。副交感神経は、呼吸数や心拍数を整え、血圧を下げ、消化器や生殖器官などの内臓への血流量を増加させ体の休養と消化を助けます。

目を閉じ、呼吸を意識し、言葉や文章を繰りかえす瞑想などの手法を使って、この反応を引き出すことができます。

またポーズや呼吸など他のヨガ的手法によっても自律神経のバランスを調整することができます。 

 

神経機能の向上

ヨガの効果はリラクゼーションだけではありません。

後屈や激しい呼吸法のように交感神経の作用が活発になるものも多くあります。

普段の生活で様々なストレスに対応するためには、交感神経と副交感神経が必要に応じて入れ替わり自律神経が適切に調整される必要があります。

ヨガは、刺激とリラックスを組み合わせて行うため、神経系が適切に機能するようになります。

 

脳への効果

ヨガで脳機能の連携、反応時間、記憶力などを改善する効果があることが証明されています。

ヨガをすることで、それまで体験したことのない体の使い方や連携した動きを学ぶことになります。

さまざまなポーズに加え、呼吸法や、瞑想を行うことで脳の中でニューロンが結合し、新たなシナプスが形成されます。

新たな刺激を受ける、学び続けるなどの外部刺激は、神経の変容能力を高め、脳機能を維持します。

また注意力が高まり、集中力が身に付きます。

 

左脳の活性化

瞑想をすることで、左前頭葉皮質の活動が活発になることが発見されました。

(リチャード・デイビットソンの機能的MRI(高性能脳スキャン))

これは、幸福感が高まり、免疫機能が向上し、ものの見方が柔軟になり、怒りや欲求不満にも対処しやすくなることを示しています。

この研究で左脳が著しく活性化したのは、チベット仏教の修行を積んだ西洋人でした。

高僧に見られる穏和な物腰と柔らかなまなざしは脳の生理的要因が関連しているものと考えられます。

 

神経伝達系のバランス回復

三~六ヶ月間のヨガで、うつ病が軽減される結果が、ベナレス・ヒンドゥー大学の研究でわかりましした。

この研究はリラクゼーション、逆転、その他いくつかのポーズと呼吸法、瞑想法でによって行われました。

ヨガを行ったグループと、抗うつ剤による治療を受けたグループでは、神経伝達物質濃度が同じように改善されました。

両グループともセロトニンが著しく増加、コルチゾールおよびモノアミン酸化酵素は減少しました。

つまり、薬物治療と同じような効果がヨガで得られることが実証されています。

 

ストレスホルモン量の減少

常にストレスを受ける環境などにいることは、コルチゾール値が慢性的に高い状態になります。

コルチゾールの高い状態が持続することは免疫系・体重・記憶力に悪影響を及ぼします。

ヨガの瞑想的効果で、これらを改善することができます。

 

高血糖の改善

糖尿病患者がヨガを行うと、空腹時の血統値・長期的な血統値の状態を示す、ヘモグロビンA1c値が下がります。

コルチゾールとアドレナリンの分泌が抑えられることに関連していると考えられています。

ヨガにより減量が促され、インシュリンの効果が高まることによって、血統値の低下につながるようです。

 

高血圧の改善

心筋梗塞、腎不全。脳梗塞の原因になる高血圧が改善されます。

高血圧は、ストレス反応が強くなると動脈が収縮し、塩分と水分がたまり、心筋が収縮する血圧が上昇するメカニズムです。

ヨガが習慣になると運動効果と体重減少により、血圧が自然に低下する傾向があります。

リラクゼーションは特に血圧を下げるのに効果があります。

  

コレステロール対策

ヨガは、悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪値のような血中脂肪量を下げる効果があることが多数の研究によって証明されています。

この作用には様々なメカニズムが関わっていますが、たとえばストレスがあると、コレステロール値が高くなったり総コレステロールに対する善玉コレステロール(HDL)の割合が低くなったりする傾向があります。

ヨガがストレスの緩和に効果的であるのはよく知られています。

ヨガを習慣にすることで体重が減少し、体調がよくなるため、中性脂肪値が下がり、善玉コレステロール値が上がります。

これは血中の資質を取り除く働きもあり心筋梗塞の危険性も低下させます。

  

腸内環境の改善

潰瘍から過敏、性腸症候群に至るまで、さまざまな腸の症状の原因の多くはストレスだと言われています。

緊張やストレスが原因でお腹の具合が悪くなったり、下痢や便秘になることもあります。

また、猫背による大腸の圧迫により便通が悪くなることもあります。

ヨガはストレスを緩和し、姿勢をよくします。また食物や排泄物を運ぶ腸の働きを活発にする働きもあります。

 

筋群の緊張緩和

無意識に体に不要な力が入っていると、いつも緊張している状態になり、筋肉が疲労し痛みを感じることがあります。

(特に肩・首・顔・腕・手首)このような状態はストレスになり、気分が滅入ってきます。

ヨガをすると意識して緊張を解けるようになり、力の入れ時・抜き時のバランスが取れるようになります。

また体に対する意識が高くなるので、どこが緊張しているのか感知できるようになります。

舌・顔・首の筋肉のように少し調整するだけで、すぐに緊張をほぐせるものと、大腿四頭筋、僧帽筋、お尻の筋肉など永年、経験を積まないと、緩める感覚が得られにくい筋群があります。

 

イメトレ効果

ヨガのイメージトレーニングによって、心身に変化を起こせます。梅干(レモン)をかじる想像をするとつばが出ます。

精巧な測定装置を使い調べてみると、上腕二頭筋に力を入れることを想像するだけで、筋肉細胞が収縮するのを測定することができます。

ヨギが大昔から行っていたビジュアライゼーション(視覚化瞑想法)を含め、イメージトレーニングの科学による裏づけが進められています。

クリーブランド・クリニックのヴィノス・ランガナサン博士は、腕の特定の筋肉を毎週5日間15分間ずつ収縮させるイメトレを行うグループと、イメトレを行わないグループの12週間後を比較してみました。すると2つのグループには筋量に違いが出ることが確認されました。

 

痛みの緩和

腰痛・関節炎・手根管症候群・線維筋痛・その他の病状を、ポーズ・瞑想・または、これらを組み合わせることで緩和できることが数々の研究によって実証されています。

高性能の脳画像診断法を用いた研究では、瞑想の熟練者は痛みの伝達器官である視床と、脳の上位中枢である大脳皮質の間の信号数を減らせることがわかっています。

瞑想により、痛みそのものとそれに伴う感情を切り離すことを学び、痛みの耐性を上げられることが確認されています。(ジョン・カバッドジン博士)

痛みから解放されることで、薬の量を減らせる可能性もあります。

 

薬を必要最小限にする

ぜんそく、心臓病、高血圧、II型糖尿病、強迫神経症の患者がヨガを行ったことで、投薬量を減らしたりまたは薬の必要がなくなったりしています。

血圧の薬の性機能低下、糖尿病の薬の低血糖など薬には副作用があります。

そのため薬の服用はできるだけ控え、薬が必要な場合でも服用量は必要最低限に抑える必要があったりします。

 

心理学的健康の向上

ヨガを行うと、気持ちが明るくなる・自信がつく・落ち着いて行動できるようになるなど、精神面での改善がみられます。

腹を立てることが少なくなり、人間関係がスムーズになります。精神的な満足度が高まり、健康になることが実証されています。

慢性的な怒りや憎しみなどの感情は、喫煙・糖尿病・高コレステロールなどと並び、心筋梗塞の危険要因です。

 

より健康的な習慣が身に付く

瞑想法を学んでいる人たちを対象にして研究したところ、ヨガを習慣にすることにより、健全な精神と体への認識が高まることがわかりました。

日頃からヨガに取り組む人にも同じことが言えます。

歩く習慣がついた、食生活が改善された、禁煙に成功したなどの経験者が多くいます。

さらにヨガの実践を深めることで、より健康へとなっていきます。

 

精神的な成長の促進

向上心を持ってヨガを習慣にすると、知らなかった自分に気づくことがあります。

精神的な成長を促す効果があり、感謝・思いやり・寛容さなどが身につきます。

 

自己治癒力の向上

何をしてもらうかではなく、何をするのかがヨガにおいて最も大切な要素です。

病院では治療を受ける立場ですが、ヨガは自分でできることを具体的に教えてくれます。

積極的に治療に関わること、そして真剣に取り組めば取り組むほど効果は高まっていきます。 

症状に対して、薬を投与したり、外科手術によって、治療を行う「対症療法」に対し、自然治癒力に働きかけて本来のバランスを取り戻していくことを「代替療法(予防医学)」と言います。

つまり、ヨガでは、病気になる前に自然治癒力を高め、病気になりにくい身体、痛みや不調が起きにくい身体=「未病」の状態をつくっていきます。

古代、瞑想法として編み出されたヨガが、現代社会では「代替療法」として、医療現場や介護の現場でも多く取り入れられています。